前書き
奈良に遊びて、景に即して数句を作る。君の一粲を博す。
星注ぐ
荒星や
そゝぐが如き
車ども
「恍然星流如注」と漢訳す
時に一片の神鴉の声を聴取し、遥かに道路を眺めて
疑うらくは是れ星河の天より落つるかと
万緑林中紅一樹
紅一樹
万緑の中
吾が待ちし
「萬綠叢中、獨木知秋」と漢訳す
「吾が待ちし」の句、『万葉集』より出づる
心動く
ふと悟る
仁者が心
動くかと
「非風非幡」の典故を用いる
「是れ風動くにあらず、是れ幡動くにあらず、仁者が心動くなり」と
灯ともし頃
灯火と
たなびきわたる
霞みかな
三条通りにて
「華燈初上、紅霞遠映」と漢訳す