神田古書祭に出掛ける

2019年第60回東京名物神田古本まつり 神保町交差点会場の様子

なぜなら
パリは移動祝祭日だからだ

ヘミングウェイ

日本に留学しに来た前に、神保町のことはもう知っていた。神保町は百年前は中国人街で、中国関連書籍が山ほど残っており、古本街が段々形成されていったという。SNSで色んな人が神保町で買ったものをアップしてシェアしており、それは主に中国で探しにくい中国関連の古本で、羨ましかった。

昨年三月、東京にやって来たら、直ぐ神保町に行った。漢文・漢詩や近代文学に興味のある私にとって大満足だった。あの頃も「春の古本祭」だったが、用事があるから参加できなくて、残念だった。そして十一月に、第六十回神田古本祭が開催されると聞いて、絶対行くと決めた。

神田古書祭で買った本

そこで『漢詩と日本人』を買った。漢文愛・漢詩愛のある私は、漢文・漢詩がいかに中国以外の国々に受容されてきたのかに関心があるから、関連資料を見つけたらすぐ読む。この本は日本人の作った代表的な漢詩を集めたものだから、日本の漢詩世界への鍵であると思う。

日本語に関わる本も買った。『日本語誤用・慣用小辞典』と『かなり気がかりな日本語』だった。『かなり気がかりな日本語』は、大学生言葉・出すぎる助詞・当世敬語表現などを分析している。

『アイヌ神謡集』も二冊ほど買った。最初アイヌという民族を知ったきっかけは宮崎駿の映画だった。そしてこの民族に興味を覚え、昨年八月に函館市北方民族資料館を見学し、アイヌの言葉や風習など、色んなことを学んだ。留学先の大学にもアイヌ語の授業があるが、他の授業があり、選択できなくて惜しかった。だが神保町でアイヌに関するものともう一度会えたのは、嬉しかった。何かの縁かも知れない。二冊とも、内容は同じだ。版数だけが違う。この二冊は同梱されていたから一緒に買った。

プレゼントとして『東方年表』という本も買った。漢字文化圏の国々の年号が載っている。東アジア史・世界史に興味のある友だちに贈る。

『女性解放思想の歩み』も買った。今フェミニズムは段々と話題になっており、知っておかなければならないと思ったからだ。

やきもの関連書類の書影

『カラーブックス』の本も買った。『やきもの入門』と『やきもの風土記』だ。このシリーズは日本の歴史や風景を中心に、それぞれのテーマを設け、代表的な写真をたくさん選んで載せている。使われている紙の質もよかった。でも全シリーズの本を一気に揃えるのは少し難しくて、ただ好きな一冊に会ったら買うのだ。

新しい街に出掛けた時、古本屋で買い物するのが大好きだ。本棚に住んでいる古本たちから、その街の歴史・性格が見えると思うから。例えば、郷土歴史の本が多ければ、誇りのある古き街のはずで、普通の観光ガイドに載っていなくて地元民しか知らない場所を見つけられるかもしれない。文学散歩地図のような本が多ければ、多くの文学者が生まれたり住んだりしていた街であることが分かれて、文学色の強いところのはずだ。料理の本が多ければ、地元自慢の美食はたくさん見つけられるかもしれない。それに、古本に書かれたノートを読むと、まるで元の持ち主たちと対話しているようだ。そして、思いがけない本を見つけられるのも奇遇だ。自分の経験としては、他の街の本屋で故郷の伝統話芸の台本を見つけたことがある。そのような偶然が好きだ。

本屋で買ったヘミングウェイの『移動祝祭日』

東京に来てから、神保町を何回も歩いたが、毎回も新しい発見がある。神保町の古本の数や種類の多さから、東京の賑やかさも見えるのだ。神保町で古本を見つけて、古本を通して出てきた人物や作者、読者たちと出会って、楽しかった。

神保町があるから、東京は私にとっての「パリ」になった。

(当記事のバナー画像の著作権者であるみそがいは、CC BY-SA 4.0で当作品を提供する。)

“神田古書祭に出掛ける” への1件のコメント

  1. とても素敵な文章ですね。
    私も良く神田古本祭りに行きます。あの古本に囲まれた雰囲気が大好きです。

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